大坂なおみさん(つづき)~黒いマスクのこと

タイムスリップの部屋へようこそ

おばちゃん;タイムスリップの部屋やで。令和2年の秋や。この年の全米オープンで大坂さん、2回目の優勝しはったんや。

KNeko;彼女は、黒いマスクを着けて、試合に臨んだんや。それぞれのマスクに、警察官の暴行や人種差別を是とする団体の行為等で命を落とした黒人の名前を入れてな。
人種差別のことは、学生の頃、授業で聞いてたけど、現代の先進国で、そんなことがあるって真剣に考えたことなかったって、ちょっと反省した。

おばちゃん;そなや。私も、警察官って、悪いことした人を取り締まるって信じてて、疑ったこと、なかったんや。少なくとも、現代の先進国ではな。
そやけど、たかが肌の色のせいで、証拠もなく、暴力を受けることがあるんや。それも命を失うような。

KNeko;ほんま、恐ろしいわ。悪いのは相手かも知れへんのに、いきなり殴られたり、銃撃されたりなんて。そんな社会で生きていかなあかんって。怖い目にあった時、警察に助けを求めたら、よけい怖い目に合うかも知らへんって、これが物語の中やのうて、今、ここで起こってることなんやって。
そら、彼女が抗議するのんも当然やわ。

おばちゃん;そやけど、アスリートが抗議するんって、そんな簡単なことやないんや。過去には、人種差別で抗議したことが理由で、事実上、出場資格を奪われたり、バッシングを受けたりした人もいるんやで。

KNeko;なんで、そんな。

おばちゃん;オリンピックとか国際的なスポーツの場に、政治的な主張を持ち込んだらあかん、ちゅう考え方があるんや。
国ごとに体制も違うし、正義とするものも違うやろ。一発即発な対立もあるやろ。それでも、そういう危ない対立の話は、ちょっと脇に置いといて、誰が一番速いんやろ、誰が一番力持ちなんやろって、そこだけを純粋に競うんや。
国によって体制も違う、スポーツ選手への援助の仕方も違う、それでも、それぞれに世界一を目指し、最高のパフォーマンスを求め、その中でお互いを知り、競うんや。フィールドの中には、鍛えられた身体ひとつ、だからこそ、通じるもんがあるってな。才能に恵まれた人が努力を重ねたら、こんなふうになれるんやって、それを称えるんや。そこには、国境はないってな。

KNeko;それも一つの理想やけど・・・。

おばちゃん;よくも悪くも、対立にふたをした理想や。ふたをしたからこそ、敵国って見られがちな国の選手のすごさに脱帽したり、親近感を覚えたりする局面も出てくるやろ。それが、対立を和らげていく可能性もあるやろ。確かに、スポーツは共通言語や。
でもな、人種差別まで、ふたをしてしもて、ええんやろか。

KNeko;出身国がどこであっても、どんな思想信条を持ってても、単に、速く、強く、高いことだけを単純に追求する・・・そやけど、最後に国旗を掲げて、国家を歌う・・・でもって、選手には、何も言うなって・・・やっぱ、なんか変かも。
そやけど、一番足の速い人の言うことやから、正しいんやってなってまうのんも、また、違うか。アスリートが政治的な広告塔になってまうのんも、いやな感じするし。

おばちゃん;なぁ、考えだしたら、なかなか難しいやろ。
もろもろの微妙なバランスの上に、国際的なスポーツ大会はあるんや。そんで、そのもろもろを考えた上での黒マスクやったと思うんや。
インタビューで黒マスクのことを聞かれると、あなたはどう思われましたか?と問い返していた彼女の姿が印象的やったで。

KNeko;直接、非難の言葉を言えないから・・・。

おばちゃん;う~ん、いろんな人に、考えてもろて、意見を言ってほしいってこととちゃうやろか。反対意見であれ、何であれ、今、こういうことが起こってるって真剣に受け止めてもらうことが、差別のない世界への第一歩なんやろから。一番まずいんは、悪気のない無関心かもなって、警察官が正義やないこともあるって思いもしなかった私が言ってええんかっとも思うけどな。
でもな、アスリートの身体能力や戦績に賛辞を送りながら、ふたをしてしまったもんから目を逸らしたらあかんって。

KNeko;大坂さんって、真摯でクレバーな面を持った方なんやね。
それにしても、今日は、おばちゃん、ずいぶんマジモードやん。

おばちゃん;大坂さんの一番の理想は、差別のない世界やろけど、そこへ向かうための理想として、彼女の黒マスクを見た人が、感じたこと、考えたことを自分の言葉で語ること、それを聞いた人が、また自分の言葉で自分の考えを語ることやと思うんや。
そやから、これは、彼女の呼びかけへの私からの返答や。

KNeko;大阪のおばちゃんから大坂さんへの?

おばちゃん;そや、ある意味、トリビュートやで。

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